不器用なシンデレラ
「お前は小学生か。それに俺は肩こりするほど年くってない」 

 理人くんは笑いながら私の頭を小突く。

「やっぱり駄目?でも、私・・・何も持ってないよ」

 そう呟いて俯く。

 理人くんみたいに何でも持ってない。

「あるよ」

「ないよ。本当に何も持ってない」

 ずっと俯いたままでいると、理人くんに顎をつかまれ上を向かされた。

「お前自身。お前だけで十分」

 急に真剣な表情になると、顔を近づけてそっと私に口づける。

 ちょっと震えるような冷たい唇。

 自分だけじゃなく、理人くんもまさかの事を考えていて怖かったのかもしれない。

 クールな理人くんにそんな感情があったのかと驚かずにはいられない。

 キスが長くなると、お互いの吐息で冷たかった唇も温かくなる。
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