不器用なシンデレラ
「長谷部さんの幼馴染みって本田さんの事だったんだ」 

「人の事はいいの。じゃあ、行こうか」

「・・・はい」

 観念して、タクシーで花屋へ向かう。

 花屋に着くと、裏にある階段で2階へ上がった。

 ずっと理人くんが無言なのが怖い。

 背後にいる彼が怒っているような気がするのは気のせいだろうか?

 鍵を開けて中に入り電気をつける。

「ここなんだけど・・・」

 恐る恐る振り返って理人くんの顔を見ると、彼の表情は険しかった。
「トイレはあるみたいだけど、お風呂は?」

 チラリと部屋の間取りを確認するなり、ズバリ痛いところを突いてくる。

 やはり有能な人間は違う。

「お風呂はなくて近くの銭湯に通ってるんだけど・・・・」

 理人くんの反応が怖くて声が小さくなる。

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