不器用なシンデレラ
 驚くと同時にもっと欲しいと思わせる。

 これが私の中の女を目覚めさせるのを意図していたのなら、理人くんはかなり狡い人だ。

 今度は私からキスをすると、彼はクスッと微かに笑った。

 どうやら私は彼の仕掛けた甘い罠にかかったらしい。

「キスは媚薬だね。もっと俺を欲しがってよ」

 理人くんが私の耳元で甘く囁くと、彼は私の耳朶を甘噛みして次には首筋に吸い付くようなキスをした。

 私の首筋に赤い華が咲くと、理人くんは満足気に笑った。

「もう俺のだから。他の奴には絶対渡さない。邪魔もさせない。大家さんには俺から話をしとくから。花音が今日から帰る家は俺の家、いい?」 

「・・・はい」

「続きは家に帰ってからしてあげる。先に謝っておくけど、今夜は気分が高ぶってて寝かせられないかもしれない」

「それってどういう?」

「明日は足腰立たなくて仕事にならないかもね。本田さんには俺が謝っておくから」

 理人くんの言葉の意味を理解して、顔が真っ赤になる。
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