不器用なシンデレラ
「すみません。今そちらに行きます」

 内線を切って長谷部さんに声をかける。

「長谷部さん、すみません。私の家族の誰かが来たみたいで・・・・」

「ああ、こっちは大丈夫だから。ついでに息抜きしてきなさい」
 
 長谷部さんがにっこり笑う。

 彼女は本当に優しくて思いやりのある先輩だ。

 でも・・・息抜きは出来そうにないな。

 母が来ても、詩音が来ても私は罪悪感がいっぱいで楽しめない。

 苦しいだけだ。

 苦笑しながら、長谷部さんに軽くお辞儀をして受付に向かう。

 受付には、モデルのように派手な身なりをした詩音がいた。

 サングラスをつけたまま、受付の女の子に文句を言っている。

 会うのは5年ぶりくらいだろうか。
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