不器用なシンデレラ
 詩音みたいに大勢の観客の前で弾いた事なんてない。

 子供たちは楽しければミスしても文句は言わない。

 でも、それも結局は私の甘えなのだろうか?

 私の自己流のピアノが受け入れられるのか?

 私が失敗すればこのお店の評判にまで影響する。

「ここで弾けなきゃどこでも弾けないよ。中途半端な演奏をしてたら子供だって納得しないんじゃないかな?」

「・・・・」

 本田さんの言う通りだ。

 私は・・・子供だからって甘く考えてた。

 純粋な子供だから良いものを教えてあげなきゃいけない。

 私のピアノは詩音みたいに専門的に習ってないからどのレベルかわからないけど、自分の好きなピアノを弾いたらみんな喜んでくれるだろうか?

「深刻に考えないでいいよ。美味しい物食べて、ピアノも楽しんで、それで良いんじゃない?店の事は気にしないで」

 ピアノを楽しむ。

 それは父が教えてくれた私のピアノの原点だ。
< 129 / 358 >

この作品をシェア

pagetop