不器用なシンデレラ
 見れば小皿の上には私の大好きないくらと玉子が乗っかっている。

 理人くん?

「ビールだけじゃすぐに酔うだろ?」

 やっぱり理人くんだった。

 言葉は素っ気なかったけどすごくうれしい。

 大好きなネタを小皿に乗せてくれたのはただの偶然だろうか。

「ありがとう」

 お礼を言ってお寿司を口に運ぶと、また本田さんが話しかけてきた。

「山下さんは一人暮らしなの?」

「いいえ、祖母と2人で暮らしています」

 私には母と双子の妹もいるけど、一緒には暮らしてはいない。

 私が4歳の時に父が私をかばって交通事故で亡くなったからだ。

 母はそれ以来、私を無視している。

 父を奪った私を許せなかったのだ。

 元々うちは音楽一家だった。

 父はショパンコンクールに入賞した経験もある有名なピアニストだった。
< 13 / 358 >

この作品をシェア

pagetop