不器用なシンデレラ
「笑ってる場合じゃないですよ。追わなくていいんですか?」

「山下さんは鷹野の事どうするの?このまま会社も辞めて逃げるの?」

「私・・・何も持ってないから。でも私はおばあさんになってもずっと好きでいると思います。1人ぼっちが寂しくなったら、尼寺にでも入って修行しようかな?」

 私が寂しく微笑むと、今一番会いたくなくて・・・でもやっぱり会いたい人の声が聞こえた。

「早起き苦手なのに尼寺は無理だろ?」

 ブランドのスーツをカッコ良く着こなして、こちらにゆっくりと近づいてくる。

 周りの若い女性もそんな彼に見惚れて食事もするのも忘れていた。

「理人くん・・・」

 急に視界がおかしくなったのか、理人くん以外のものが全て白黒に見える。

 まるで時間が止まったかのようだ。

「長谷部さんとそこですれ違いましたけど、泣いてましたよ。追わなくて良いんですか?好きなんでしょう?」
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