不器用なシンデレラ
「まあね。今頃最上階のバーでやけ酒でもしてるんじゃないかな。山下さんの王子様も来たことだし、邪魔者は退散するよ。あっ、見合いに付き合わせたお詫びに僕のつけでここで食べてって。宿泊するなら宿泊代は鷹野持ちね」

 本田さんは立ち上がってにっこり微笑む。

「人の女勝手に偽恋人にして何ケチな事言ってるんですか?宿泊代ももちろん本田さんに払ってもらいますよ」

「先輩にも容赦ないな。少しは敬えよ」

「それに値するなら」

 理人くんは不敵の笑みを浮かべる。

「あ~あ、こんな奴だけど、君を想う気持ちは本物だから。山下さんは、逃げずにちゃんと話し合いなよね」

 お得意のウィンクをして本田さんは長谷部さんの後を追う。

「私も・・・帰る」

 理人くんと2人になるのが嫌で席を離れようとすると、彼に手を捕まれた。

「帰さないよ。もうかくれんぼはお終い」

 有無を言わさずまた座らされる。

 だが、意外にも理人くんは優しい口調で私に話しかけた。
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