不器用なシンデレラ
 でも、理人くんが人差し指を唇に当てると、途端にその場が静まり返った。

「今日は、僕は花音先生にプロポーズしに来たんだよ」 

 理人くんが極上の笑みを浮かべる。

「花音先生の王子さまなの?」

 1人の女の子が無邪気に質問すると、理人くんはゆっくり頷いた。

 そして、椅子から立ち上がると、ポケットから何か箱を取り出し、私の前に跪いた。

「花音、僕と結婚してくれますか?ずっと側にいて欲しい。2人で幸せになろう。返事は?」

 理人くんが真剣な表情で私を見る。

 園児達も黙って、私達の様子を見守っていた。

「・・・こんな不器用な私でいいのなら、お願いします」

 私が半泣きの状態で返事をすると、園児達が「キャー」と歓声を上げた。

「もう一度生まれ変わっても花音を選ぶよ」

 理人くんはそんな私を見てフッと微笑すると、持っていた箱を開けて中に入っていた指輪を取り出す。
< 159 / 358 >

この作品をシェア

pagetop