不器用なシンデレラ
「ピアノ好きなの？一緒に弾く？」

　俺が誘うと彼女は小さく頷いて、俺の横に座った。

　彼女は技術的にはまだまだだったけど、一度聴いただけで弾けるという良い耳を持っていた。

　花音が笑う。

　きっとピアノが好きなのだろう。

　それからは、徐々に笑うようになった。

　幼稚園の頃は花音と一緒に遊んでいたけど、小学生になると女の子と遊ぶのが恥ずかしくなった。

　花音の戸惑いは感じていたけど、自分でもどうすることも出来なかった。

　そんなある日、圭吾が花音の事をじっと見ているのに気づいた。

　俺がその事を指摘すると、圭吾は花音が好きな事を素直に認めた。

　正直、そんな風に躊躇せずに花音のことを好きだと言えるあいつがうらやましかった。　

　圭吾はずっと花音の事が好きだった。
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