不器用なシンデレラ
 花音を一瞥して冷たく言い放つと、彼女はそそくさと俺の前から逃げた。

 もう大学だって違う。

 いくら隣に住んでいたって、進路が違えば会う回数も減るだろう。

 それでいい。

 花音を見ると圭吾を思い出して苦しい。

 まるで悪い魔法にかかったように。

 花音を受け入れれば、俺は・・・自分を許せない。

 圭吾に抜け駆けして・・・自分だけ幸せになるわけにはいかない。

 ずっとそう思い込んでいた。

 かと言って、他の女には興味がなかった。

 みんな一緒に見える。

 特に俺に媚びてくる女は、ほとんどが金か顔目当てでうんざりした。

 花音以外は女に見えなかった。

「俺・・・一生独身かもしれないな」

 俺は自嘲する。
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