不器用なシンデレラ
 それから月日が経って、うちの会社の入社式で信じられないものを目にする。

「何であいつがうちの会社にいる?」

 新入社員の挨拶で壇上にのぼると、他の新入社員と並んで椅子に座っている花音がいた。

 俺が彼女を見間違えるはずがない。

 間違いなく花音だ。

 幼稚園の先生を目指していたはずなのに何故ここにいる?

 挨拶をしている間も、花音の事が気になって仕方がなかった。

 彼女は紺のスーツを着て長い黒髪をシュシュで1つに纏めている。

 女子大に行ったのに、全然すれてなくて、高校時代とあまり印象は変わらなかった。

 そう純粋でどこか抜けてて・・・でも思い込んだら一途で。

 花音の視線を避けるのに凄く苦労した。
< 167 / 358 >

この作品をシェア

pagetop