不器用なシンデレラ
「・・・・」

「お前は頭が良いから何でも出来るけど、花音ちゃんと会わなくなってから、ずっと死んだ目をしていた。自分でも自覚してるだろ?」 

「・・・だからって、どうして?あいつが幼稚園教諭になりたかったの親父だって知ってただろ?」

「花音ちゃんのお願い叶えたくなったんだよね。惚れてる女が自分を追って同じ会社に入ったんだ。お前だって悪い気はしないだろう?」

 親父がニヤニヤする。

「勝手に決めるつけるなよ」

 からかう親父にうんざりしながら自席に戻る。 

 椅子に座るとすぐに花音の視線を感じた。

 本当に俺を追ってきたなら、お前は馬鹿だ。

 なんで自分の夢諦めてここにいるんだよ。

「本当にお前は馬鹿だ」

 周囲には聞こえないような小さな声で苦く呟く。
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