不器用なシンデレラ
「先輩なら先輩らしく振る舞って下さい」
   
「私は花音ちゃんと仲良くしたいだけ。御曹司は邪魔すんな」
 
 ・・・御曹司って呼ばないで欲しい。

 だが、そこには触れず長谷部さんを軽くあしらう。

 酔っぱらいはまともに相手してはいけない。

「だったら素面の時にお願いします」

 長谷部さんに気を取られていると、花音に異変が起きた。

「うっ・・気持ち悪い」

 突然、花音は呟いて口を押さえる。

「大丈夫か?」

 花音に声をかけられるが、その質問に答える余裕もない。

 これは吐くな。

 立ち上がってトイレに行こうとする彼女を抱き上げて座敷を出る。

 人目を気にしている場合じゃなかった。

 花音の様子を見ると、もうトイレまでもちそうにない。

 抱き上げてた彼女を廊下の床に下ろす。

 そして、着ていたスーツのジャケットを脱いですぐに花音の口に当てた。
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