不器用なシンデレラ
 そんな花音を抱き抱え、声をかける。

「まだ気持ち悪いのか?水飲んで」

 俺がグラスを花音の口まで運ぶと、彼女はごくっと音を立てて1口飲む。

 水を飲んで気分が少し楽になったのか、花音は俺に向かって小さく微笑んだ。

「理人くん・・ありがとう」 

「・・・・」 

 下の名前で呼ばれ思わず面食らう。

 理人くんって呼ばれるのは何年ぶりだろう?

 おしぼりで花音の顔を拭いながら考える。

 しばらくすると、汗をかいたせいか彼女が寒いと言って震え出した。

「花音?」

 俺も昔を思い出して下の名前で呼ぶと、それに応えるかのようににっこり笑った。

「やっと呼んでくれた」

 花音はそう呟くと、目を閉じて俺の腕の中で眠りについた。

 ・・・寝ても笑ってる。

「おい、花音?」

 嘘だろ?
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