不器用なシンデレラ
 ここで寝るのか?

 気分が悪かったとは言え無防備過ぎだろう。

「花音、寝るな。家まで送ってやるから起きろ」

 軽く頬を叩くが反応がない。

 諦めて花音を抱き上げ、座敷に戻る。

 すると、騒がしかった部屋の中が、俺達を見た途端に静まり返った。

 好奇な視線にうんざりしたが、気を取り直して本田さんを呼ぶ。

「本田さんすみません。俺と山下さんの荷物とコート取ってくれますか?」

「ああ、山下さん大丈夫か?」

「まだ気分が悪いようなので送って行きます。主役なのに途中で抜けてすみません」

「謝るなよ。タクシー呼ぶから。おい誰か、鷹野と山下さんの荷物取って」

 本田さんはタクシーを呼ぶと、俺達の荷物を持って表まで出て来てくれた。
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