不器用なシンデレラ
 彼女をまた抱き上げてタクシーを下りて、玄関のインターフォンを押す。

 すると、すぐに雅代さんがドアを開けてくれた。

 もう70はいってるはずなのに、背筋はピンとしていて凛とした佇まいは相変わらずだ。

「あら、理人くん。まあ、花音寝ちゃったのね。ここまで送ってくれてありがとう」

「歓迎会で気分が悪なってしまったようで。このまま花音の部屋に運んで良いですか?」

「頼んで良いかしら?ごめんなさいね」

「いえ」

 にっこり笑って、真っ直ぐ花音の部屋に向かう。

 ここは、昔と変わらないな。

 ホッとする。

 花音の部屋に入ってベッドに彼女を寝かせる。

 彼女にかけていたコートをとろうとするが、彼女がしっかり掴んでいて離さない。

「スッポンか、お前は」

 クスッと笑って、花音の部屋を見渡す。

 すると、あるものに目が釘付けになった。
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