不器用なシンデレラ
 もう一度、花音に電話するが、やはり応答がない。

「・・・・」

 何で出ないんだ!

 仕方なくまたメールの処理をする。

 だが、もうメールの文面が全然頭に入ってこない。

 花音が心配で気が狂いそうだ。

「心ここにあらずね。冷静沈着な御曹司が珍しい。きっと山下さん、無事で戻るわ」

 向かい側に座っている長谷部さんと目が合う。

 俺らしくないか。

 確かに、自分の事でこんなに動揺する事はない。

「ええ、そうですね」

 軽く相槌を打って仕事に集中するが、どうしても鳴らないスマホに目がいく。

 もうすぐ6時かと壁かけ時計を見て、目線をまたパソコンに戻そうとした時、騒ぎの主が申し訳なさそうな顔をして現れた。

 良かった。

 無事だった。

 だが、安堵する反面、感情が爆発して花音を怒ってしまう。

 大切だからこそ・・・・。
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