不器用なシンデレラ
「鷹野、もういい。山下さんは今日はもう帰って良いから。話は明日ね。山田、お前は今夜お説教だから」

 本田さんも俺の意図がわかったのだろう。

 みんなの前で花音を注意せず、彼女に優しく笑いかける。

 そして、俺の方を振り返った。 

「鷹野、お前もA社行くぞ。お前の顔を売るチャンスだ。お手並み拝見といこうか」

「上司は本田さんでしょう。部下に手本見せて下さい」

 冷ややかに言ってみせたが、花音のミスを俺が挽回しようと思った。

 本田さんと共にA社に行くと、なぜか会長と社長に出迎えられた。

 何でだ?

 本田さんと思わず目を合わせる。

 謝罪する側をトップが出迎えるって、何がどうなってる?

 契約更新の意志がなければ、わざわざトップが出迎える必要はない。

 訳がわからない。

 応接室に通されると、本田さんと俺はソファーには座らず頭を下げた。
< 187 / 358 >

この作品をシェア

pagetop