不器用なシンデレラ
「今回の契約更新はもちろんですが、8月に完成予定の新社屋の複合機もTAKANOさんにお願いしたい」

 会長がにっこり笑う。

 思ってもない言葉だった。

 会長の奥さんを助けたとはいえ、約束をすっぽかした事には変わりないのに。

「ありがとうございます」

 本田さんもいつもの営業スマイルで礼を言う。

「何か良い機種があれば話を聞きたいのだが」 

 社長の言葉に本田さんはお前の出番だとばかりにんまりした。

「それでは、うちの鷹野の方からご説明させて頂きます」

 上司の手本はどうなった?と突っ込みたかったが、花音のミスを挽回するために笑顔で会長と社長に名刺を渡す。

「営業の鷹野です。今後ともどうぞよろしくお願いします」 

「君が鷹野さんの息子かあ。かなり優秀らしいじゃないか。噂は聞いているよ。TAKANOはいい男揃いだな、ははは」

 会長が笑顔で誉める。
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