不器用なシンデレラ
「俺は向こうで待ってるから。慌てずゆっくりでいい」

　優しく声をかけ、屈んで花音の髪の毛に口付ける。

　かすかにフローラル系のシャンプーの匂いがした。

　だが、俺の行動が予想外だったのか、花音が口をパクパクしながら赤面する。

「それだけ赤くなってればチークは不要だね」

「り・・理人くん！」

　俺がからかうと、花音が顔を真っ赤にして叫んだ。

　そんな彼女が可愛くてクスッと笑う。

　花音は今かなり混乱してるだろう。

　今まで素っ気なかった俺の態度が急変したことに戸惑わないはずがない。

　リビングに行くと、ソファーで親父と雅代さんが歓談していた。

　花音がいないのを確認すると、お袋がテーブルの上に書類を広げた。

　それは、婚姻届。

　先週末に俺がお袋に頼んで置いたものだ。

　それを見て雅代さんは驚いた顔をしていたが、親父の目は笑っていた。

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