不器用なシンデレラ
　俺は座って婚姻届に記入する。

　自分の記入が終わると、雅代さんの方を向いて深く頭を下げた。

「花音を僕に頂けませんか？結婚したらあなたの代わりに守ると約束します。だから、ここに署名してもらえませんか？本来なら２人の記入をしてからというのが筋ですが、花音の心の準備が出来たらプロポーズしたいと考えています」

　まだ恋人でもないのにプロポーズしたら花音はきっと混乱するだろう。

　今日、幼稚園やバスルームでちょっと俺が触れただけでもパニックになった。

　多分、大学は女子大だったし、家にも男はいないし、男性にあまり慣れていないのだろう。

「理人くん、頭を上げて」

　雅代さんが優しく俺に声をかける。

　俺がゆっくり顔を上げると彼女は満面の笑みを浮かべていた。

「理人くんが花音のお婿さんになってくれるなんて嬉しいわ。ずっとあなたの事が好きだったんだもの。喜んで署名させてもらいます。それにしても達筆ね」
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