不器用なシンデレラ
 花音は茫然自失の状態で霊安室にいた。

 その背中はとても小さくて、今にも泣き崩れそうで。

 彼女の姿を見つけると、俺はぎゅっと抱き締めた。

 泣き虫なはずなのに、花音は泣いてはいなかった。

 多分、泣きたくても泣けないくらい精神的ショックが大きいのだろう。  

 俺に抱きつく力さえない。

「悪い、遅くなった」 

「・・・おばあちゃん、すっかり冷たくなっちゃった。私・・おばあちゃんの最期看取れなかったんだ」

俺の腕の中で花音が寂しそうに笑う。

 そして、彼女の懺悔が始まった。 

 救いが欲しかったのではない。

 後悔だけが花音を襲う。

「・・・今日ね、おばあちゃんが作ってくれたお味噌汁、時間がないからって残したんだ。こんなことなら全部ちゃんと食べれば良かった。もう食べたくても食べられないのにね」

「うん」

 花音の言葉に俺はただ静かに頷いた。
 
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