不器用なシンデレラ
 俺の願いが通じたのか、葬儀屋が着いたのにも気づかないくらい彼女の眠りは深かった。

 それでいい。

 現実の嫌な部分なんて、お前は見なくていい。

 葬儀や死亡届の手続きなんて知る必要ない。 

 そう思う俺は、やっぱり花音に過保護なのかもしれない。

 でも、彼女には今のうちにいっぱい泣いてもらいたい。

 いっぱい泣いて、悲しい気持ちも成仏させて、またいつもの笑顔を見せて欲しい。

 止まない雨はないのだから。
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