不器用なシンデレラ
「何かあったのか?」

 心配になって家を飛び出し、花音の家に向かう。

「・・・・」

 電気がついていなかった。

 何かあったのか?

 そっと玄関のドアに手をやると、鍵は開いていた。

 まさか、泥棒?

 ドアを開けてそっと中に入る。

 だが、真っ暗で、物音もしない。

 人がいる気配がない。

 玄関の明かりをつけて、花音を探す。

 キッチンにも、居間にも、彼女の部屋にもいない。

 ふと庭の方へ目をやると、彼女は縁側にいた。

 障子を開けると、花音は寂しそうな目をして庭を眺めていた。
  
「お前、ここにいたのか?電気もつけないで」

「お月様の光だけでも結構明るいんだよ」

 俺の方を振り返って微笑する花音は、捕まえてないと今にも消えそうな程弱々しい。
< 215 / 358 >

この作品をシェア

pagetop