不器用なシンデレラ
 彼女が俺を睨んでも全然怖くない。

 むしろ可愛い。

「俺はお前みたいに泣き虫じゃないから。それに、好きな女が目の前で泣いたら慰めたいって思うだろう?」

「好きな女って私?」

 花音がすごく意外そうな顔で聞いてくる。

 彼女に自分の想いは告げてなかったし、驚くのも当然か。

「好きでもない女にキスする趣味はない」

 いつものように素っ気なく言うと、なぜか花音は俯いた。

「でも・・私はいつも迷惑かけてて・・・」

 このマイナス思考。

 花音の性格だから仕方ないが、今は聞きたくない。

「五月蠅いよ。黙らないなら黙らせる」

 自分の口で花音の唇を塞ぐ。

 それでもまだ信じられないのか、彼女はずっと俺を見つめたまま何か考えている。

 だから、一旦キスを止めて、花音の目を見ながら真剣に言った。


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