不器用なシンデレラ
「・・・・。お前、喧嘩売ってる?接待、僕が途中で抜けたこと根に持ってるだろ?」

「ちゃんと誉めてますよ」

「本当にお前って、何やっても完璧過ぎてム・カ・つ・く」

 内緒話をするように本田さんがわざと俺の耳元で囁く。

 この嫌がらせ・・・気持ち悪いので止めて欲しい。

「有能な部下に言う言葉じゃないですね」

「でも、お前が山下さんを想って一生懸命になってる姿はいいと思う。鷹野がうらやましい」

 本田さんが俺の顔を見てにっこり笑う。

 彼の一番の武器はこの笑顔だ。

 本田さんが笑うだけで場が和む。

 これは天性のものだろう。

 本人が図に乗るといけないので絶対に言わないが。

 車が都内に入ったところで、本田さんの携帯が鳴った。

「はい、本田です。みんなには帰国早まったの知らせてなかったのによくわかったな。は?山下さんがB社のエロ部長に?」
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