不器用なシンデレラ
 俺が目で頷くと、彼は言った。

「赤坂に入った。もうすぐだ」

 どうか間に合ってくれ。

 俺の心臓の鼓動が激しくなる。

『お願い止めて』

 スマホから聞こえてくる花音の声に、胸が締め付けられるように痛くなる。

 会話は聞こえてるのに、すぐに助けてやれなくてもどかしかった。 

『いや!触らないで!』

 花音の悲痛の声に、思わず目を閉じて血が出そうなほど拳を握り締める。

 早く、早く!

 まだなのか!

「鷹野、着いたぞ!」

 本田さんの声に反応して、俺は車が停車するよりも早くドアを開け飛び出した。
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