不器用なシンデレラ
 再びスケベじじいに視線を戻し、拳をギュッと握り締めたところで本田さんの声がした。
 
 本田さんの登場に、俺は心の中でチッと舌打ちする。

「うちの社員がいくら可愛いからって、こんな風に手を出すのは犯罪ですよ、前田さん」

 本田さんは腕を組ながら前田部長を睨みつける。

 多分、本田さんはこの時の俺の殺気に気づいたのだろう。

「鷹野、ここは僕に任せて。早く山下さんを送ってあげて」

 わざわざ俺に目線を合わせて言った。

 要するに、前田部長に自分の手を汚してまで報復するなと言いたいのだろう。

 仕方ない。

 前田部長の事は彼に任せよう。

 素直に本田さんの言葉に従う。

 優先すべきは花音。

「すみません。ありがとうございます」

 俺は前田部長から無造作に手を離し、すぐに屈んでまだショック状態の花音を抱き上げる。
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