不器用なシンデレラ
 すると、花音が口を開いた。

「理人くん・・またスーツ汚れる。私、スーツお酒で濡れてて」

 そう言って俺から離れようとする。

 花音らしいいつもの遠慮。

 だが、離せる訳がない。
 
「構わない。黙ってて。俺、いま気が立ってるから。本田さんがいなかったら、あのエロ部長ボコボコにしてた」

 こうして抱き締めていないと安心出来ない。

「・・・また心配かけてごめんなさい」
 
 花音がシュンとした顔で謝る。

「電話から一方的な会話だけ聞こえてきて・・間に合わなかったらどうしようって不安で死にそうだった」

 より一層強く花音の身体を抱き締める。

 こんなに細くてか弱い身体。

 男に組み敷かれたら1人で逃げられる訳がない。

「無事で良かった。帰国が遅れたらどうなってたか考えるとゾッとする。早く帰って来て良かった」
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