不器用なシンデレラ
「私も・・・怖かった。もう駄目かと思った」

 花音が俺にしがみつく。

 本当に怖かったのは彼女だ。

 あんな男に襲われそうになって・・・恐怖に震えて。
 
 絶望感を感じたんじゃないだろうか。

「ああ、怖かったな」

 俺は自分の額を花音の額にくっつけ目を閉じる。

 伝わる互いの体温。

 彼女に何かあったら気が狂っていたかもしれない。

 少しずつ気持ちが落ち着く。

 さっきまで体中に漲っていた殺気も次第になくなっていくのが自分でもわかる。

 もう大丈夫、花音も俺も。

 自分にそう言い聞かせると、静かに目を開けて花音と目を合わせた。

「俺の寿命確実に縮んだよ。どう責任とってくれるの?」

 優しく花音に微笑みかけると、彼女も少し落ち着いたのか俺に微笑み返した。
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