不器用なシンデレラ
 顔を近づけ花音の唇に自分の唇を重ねる。

 それから、当初の目的通り彼女に引っ越し先を問い詰め、なぜか花屋の2階にいる。

 鍵は1つだけ。

 しかも、壊そうと思えば簡単に壊せそうだ。

 チェーンもついていない。
 
「ここなんだけど・・・」

 花音が恐る恐る俺を振り返る。

 鈍感な彼女も流石に俺がかなり不機嫌なのを感じ取ったらしい。

 今の時点で俺の眉間に皺が寄っている。

 キッチンにトイレに・・部屋は6畳くらいだろうか?

 だが、風呂が見当たらない。

「トイレはあるみたいだけど、お風呂は?」

 きつい口調についなってしまうのは仕方がないと思う。

「お風呂はなくて近くの銭湯に通ってるんだけど・・・・」

 俺の反応が怖いのか、花音の声が段々か細くなる。
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