不器用なシンデレラ
「汚い・・・汚い」

 半泣き状態で花音はしきりに腕をスポンジで擦る。

 よく見れば、腕は擦り過ぎて真っ赤になっていた。

 所々血も出ている。

「花音!」

 もう見てられなかった。

 花音の手からスポンジを取り上げる。

「返して!まだ汚いの」

 花音が泣き叫びながら懇願するが、返す訳にはいかない。

「花音、もうやめるんだ。血が出てるだろう?」

 諭すように言うが、彼女は納得しない。

「まだ汚いの。全然綺麗にならないの」

 あのエロじじいに襲われた時のショックが今また来たのだろう。

 花音を1人にしたことをひどく後悔した。

 俺はシャワーを止めて、彼女の肩を掴んで優しく言った。
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