不器用なシンデレラ
 指定されたレストランに着くと、案の定花音はいなかった。

 案内されたテーブルにはすでに詩音と花音の母親がいた。

 会うのは何年ぶりだろう。

 いや、十数年ぶりか。

 でも、悪い意味で昔と印象は変わらない。

 どちらもブランド物でかためた派手な外見。

 本当に花音と血が繋がってるのか疑いたくなる。

 すでにこの店で一番高そうなシャンパンをボトルで注文してくつろいでいるのを冷ややかに見る。

 花音が住む場所にも困ってるというのに。

 見ているだけで嫌悪感を感じた。

「お久しぶりですね。花音はいないんですか?」

 お待たせしてすみませんとはあえて言わない。

 言いたくない。

「あらやだ。伝言も満足に出来ないなんて、本当に花音は使えないわね。今日は私たちだけよ」

 花音を馬鹿にする詩音の発言に、思わず怒りがこみ上げてくる。
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