不器用なシンデレラ
 音楽で生計を立てて働いている様子はない。

 馬鹿な男にでも貢がせているのか?

 そして、今度は俺を狙ってるとか?

 俺に媚びるような視線を感じる。

 大学の時の女達の目と一緒だ。

 欲しいのは俺じゃなくて、金や地位や家柄。

「もうお腹ペコペコなのよ。さあ座って。早く食べましょう?」

 同じ姉妹なのにどうしてこうも違うのだろう。

 詩音の声を聞いただけでイライラしてくる。

「それで、ピアノが駄目だから男捕まえて優雅な生活しようと思ってる?俺はお前みたいな奴に簡単に落ちる程馬鹿じゃないけど」

「何を言ってるの?」

「一緒に食事はしないって言ってるんだよ。さっきも言ったけど、花音がいないならここにいても無意味だ」

 俺は冷ややかに告げる。
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