不器用なシンデレラ
「ちょっと失礼じゃない?」

 俺の言葉に詩音の態度が変わった。

 怒りを露にして俺に食って掛かる。

「お前に言われたくないね。お前、花音のピアノの才能に嫉妬してるんだろ?だから、花音にずっと冷たかったんじゃないのか?」

「私が花音に嫉妬?私はドイツに留学してピアノを習ってるのよ。そんなわけないじゃない」

「ドイツに留学したから上手いと言えるのか?コンクールにも入賞していないのに、たいした自信だな」

「そ、それは・・たまたま運が悪かったからよ」

「何回コンクール受けてるんだよ?確かに技術的にはドイツで勉強したお前の方が上かもしれないが、もしお前と花音が順番にピアノをコンサートホールで弾いたら、観客は花音の演奏に多く拍手する。断言してもいい」

「私が花音になんかに負けるわけないわ!あんな愚図に」

「花音は透明感のあるキレイな音で優しいピアノを弾く」

 大声で反論する詩音に対し、俺は静かな声で告げた。
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