不器用なシンデレラ
　大貫先輩は本田さんと同期で、圭吾の兄だ。

　フランスに料理の修行に行ったと聞いていたがもう戻って来たのか。

「お久しぶりです。良いですよ。これから伺います」

　花音の事が気になったが、本田さんが彼女に手を出すとは思えない。

　何か理由があるのかもしれない。

　後でまた花音か本田さんに電話をかけるか。

　俺はホテルの前に停まっていたタクシーに乗り、大貫さんの店へ向かった。

　店の前でタクシーが止まると、俺はその店の外観にまず驚いた。

　スペインのアヴィラという城壁の街のような高い壁。

　そう言えば、圭吾は城とか城壁に興味があったな。

　入り口に着くと、大貫先輩が出迎えてくれた。

「外観も内装も見事ですね。ひょっとして圭吾の？」

「良くわかったね。圭吾のパソコンに残ってた設計図を元に建てたんだ」

　大貫先輩がとても嬉しそうに笑う。
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