不器用なシンデレラ

　近づくとその女の顔がはっきり見える。

「・・・・長谷部さん？」

　俺の声に驚いてその女性が振り返る。

「・・・・」

　やはり長谷部さんだ。

　ひょっとして、本田さんが心配で来たのか？

「違うの。違うの。私は友達と約束してて、あはは」

　俺が何も聞いてないのに、長谷部さんは何か言い訳して乾いた笑いを浮かべると俺から逃げるように１人レストランに入っていく。

「何なんだ一体？」

　長谷部さんは本田さんのいるテーブルにまっすぐ向かうと、テーブルに置いてあったグラスを掴んで中に入っていた水を彼にぶっかけた。

「・・・マジかよ」

　見ているこっちは驚いたが、なぜか本田さんは嬉しそうだ。