不器用なシンデレラ
「まあね。今頃最上階のバーでやけ酒でもしてるんじゃないかな。山下さんの王子様も来たことだし、邪魔者は退散するよ。あっ、見合いに付き合わせたお詫びに僕のつけでここで食べてって。宿泊するなら宿泊代は鷹野持ちね」

「人の女勝手に偽恋人にして何ケチな事言ってるんですか?宿泊代ももちろん本田さんに払ってもらいますよ」

 こっちは心配で寝れなかったんだ。

 それくらい安いもんだ。

「先輩にも容赦ないな。少しは敬えよ」

「それに値するなら」

 俺が不敵の笑みを浮かべると、本田さんは花音に目を向ける。

「あ~あ、こんな奴だけど、君を想う気持ちは本物だから。山下さんは、逃げずにちゃんと話し合いなよね」

 花音に優しくそう言うと、女を虜にするいつものウィンクをして本田さんは長谷部さんの後を追う。

 本当に人騒がせな人だな。
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