不器用なシンデレラ
「私も・・・帰る」

 俺と2人になるのが気まずいのか、花音は席を離れようとする。

 だが、俺は彼女の腕を掴んでひき止めた。

 ここで逃がすわけない。

「帰さないよ。もうかくれんぼはお終い」

 それから、花音の退職届と無効になった婚姻届の話をして、今ホテルのスイートルームにいる。

 横には天使のような寝顔で眠る花音の姿。

 気づけば空はうっすらと明るくなっている。

 流石の俺も2晩連続で寝ないのは辛い。

「もうすぐ6時か」

 これから3時間ぐっすり眠れば疲れも取れるだろう。

 朝食はルームサービスでも取ってのんびりしよう。

 普段自宅にいるから東京にいてホテルに泊まることはないが、こういうのも有りかなって思う。

 誰にも邪魔されず、夜景を楽しんで2人でゆっくり過ごして。
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