不器用なシンデレラ
 俺が本田さんに耳打ちすると、彼はしきりに長谷部さんの方を気にしていた。

「浮気はもう厳禁ですよ。ここのホテル代頼みますね」

 俺が意地悪く言うと、本田さんが苦笑する。

「図々しい奴だな。お前さ、山下さん以外に弱味ないわけ?」

 財布からブラックカードを出しながら本田さんが聞いてくる。

「ないですよ。あっても他人に教える程馬鹿じゃないですから」

「あ~あ、山下さんの貸し出し料一体いくらだよ?」

「プライスレスですよ」

 俺が勝ち誇ったように言うと、本田さんはガックリ肩を落とした。
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