不器用なシンデレラ
「ああ」

 確かに、俺も花音を救いたいっていつも思ってた。

 母親が改心することがなくて諦めていたが・・・・。

「花音ちゃんはもう私の娘だからな。あの子には笑っていてもらいたいんだよ。他の奴には絶対取られるなよ」

「当然だろ」

「あの子の笑顔を守るためなら、多少汚い部分は目を瞑る」

 そう言ってコーヒーを口に運ぶ親父を、少し格好いいと思ってしまった。

 まだ、この人には勝てないとも。

「親父、ありがとう」

 雅代さんの喪が明けるのはもうちょっと先だが、花音もだいぶ幼稚園の仕事に慣れてきたみたいだし、改めてプロポーズするのもいいかもしれない。

 花音が良いなら籍だけ先に入れて、式は後で挙げて。

 それに、花音を深い闇から解放してやりたい。

 この婚姻届を見たらきっと喜ぶだろう。
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