不器用なシンデレラ
 だから、タバコと酒に逃げた。

 それでも、要が他の女の子に笑いかけると、ムッとせずにはいられない。

 そもそも奴が私を女扱いした事があったろうか?

 記憶をたどるが皆無だ。

 ある日、定時後の喫煙所で一服していると要がやって来た。

「お疲れ。もう仕事終わったの?」

「まあね。あと2ヶ月で新人が入ってくるし、今日はマニュアル作ってたわ」

「今度入ってくる新人の中に、社長の息子がいるんだけど、そいつ俺の後輩なんだよね」

「御曹司か」

「まだオフレコだけど、うちの課に入ってくるからよろしく頼むよ。出来る奴だけどね。ああ、あと女の子も1人入ってくるなあ」

「女の子は要の専門分野でしょ。あんたが手取り足取り教えれば喜ぶと思うわよ」

「その言い方、トゲを感じるけど。彩は何でも出来るから手取り足取り教える必要ないでしょ」

 要がいつものようににっこり微笑む。
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