不器用なシンデレラ
「じゃあ、私が男知らないって言ったら手取り足取り教えてくれる訳?」

「・・・・」

 私の言葉に要が黙り込む。

 この沈黙は痛い。

 いつものように茶化してくれればいいのに。

 イライラしてたとはいえ、口にするべきじゃなかった。

 こんなの私らしくない。

「・・・冗談よ。忘れて」

 タバコの火を消して喫煙所を出ようとすると、要に腕を強く掴まれた。

「俺が教えないなら他の誰に頼むつもりだ?」

 いつも優しい雰囲気の要の声が低くなる。

 奴の表情も何故か険しい。

「冗談て言ったでしょう?」

「お前はこういう冗談は決して言わない」

「要をからかっただけ。私もう帰るから離してよ」

 要の手を振り払おうとするが、奴の力が強くて出来ない。
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