不器用なシンデレラ
「何で要が?山下さんは?」

「山下さんには偽恋人役頼んだだけ。本当に手を出したら、俺、鷹野に殺される」

 要がクスクス笑う。

「嘘よ」

 だが、こいつの言葉なんてそんな簡単には信用出来ない。

「嘘じゃない。もうお互い素直にならない?」

「何を?」

「そうやって誤魔化さないの。彩は俺の事好きだよね?」

「・・・・」

「俺は彩の事好きだよ。お菓子は飽きるけど、ご飯は飽きないだろ?多分、50年経ってもお前には飽きない自信ある」

「何調子の良いこと言ってるのよ!」

「本気だよ。今夜こそお前の口から俺が好きって言わせてみせるから」

 要が悪魔のような微笑を浮かべると、私に顔を近づけて口づけた。

「・・・・」

 身体は何度も重ねたのに、キスは初めてだった。
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