不器用なシンデレラ
「ほらね。こんな女、俺くらいしか相手出来ないでしょう」

 俺の腕の中にいる彩がこの上なく愛おしい。

 いつも泊まる部屋に彼女を運び、寝顔を眺める。

 大事なのはこれから。

 彩が起きたら好きだって伝えよう。

 そう言えば、いろんな女と付き合ったけど自分から好きって言うのって初めてじゃないか?

 シャワーを浴びてバスローブに着替えると、彩はまだ寝ていた。

 このまま朝まで眠るかなって考えていると、目覚めた彼女と目が合った。

「何で要が?山下さんは?」

「山下さんには偽恋人役頼んだだけ。本当に手を出したら、俺、鷹野に殺される」

 目覚めたばかりの彩が混乱している。

 そんな彼女を見てると思わず笑みが溢れる。

「嘘よ」

「嘘じゃない。もうお互い素直にならない?」

「何を?」

「そうやって誤魔化さないの。彩は俺の事好きだよね?」

 俺の言葉に彩は黙り込む。
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