不器用なシンデレラ
「クールな彩も良いけど、今の彩も可愛い。もっともっと素直になって俺だけのものになれ」

 嬉しくて仕方がない。

 言質は取った。

 プロポーズの返事は聞いてないけど、もう俺のものだ。

 誰にも渡さない。

「俺を惚れさせた責任取れよ」

 疲れて眠る彩の手を取り、用意していた指輪を嵌める。

 後は外堀を埋めていけばいい。

 じっくり、確実に。

 それから1か月後、役員会議に呼ばれた時に常務である彩の親父には結婚の意思を伝え、隣にいた社長には仲人を頼んだ。

 そんな俺を一緒に呼ばれた鷹野が冷ややかな目で見る。

「俺も人の事言えませんけど、勝手に決めていいんですか?今日、長谷部さんランチの時具合悪そうでしたよ。トイレに駆け込んでましたけど。立ちくらみもしてるみたいだし。身に覚えあるでしょう?」
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