不器用なシンデレラ
 それから新婚旅行がスペインという話が出て夢を脹らませていると、あっという間にパーティーも終わった。

 もう夜中の12時過ぎ、理人くんたちと一緒に家に帰ると、玄関先に一輪の真っ赤なカーネーションが置いてあった。

 メッセージカードはついていない。

「カーネーション?一体誰が?」

 理人くんが花を拾い上げる。

 カーネーションで思い浮かぶのは・・やっぱり母だ。

 幼稚園の時に作っても受け取ってもらえなかったカーネーション。

 これって、お母さんからだってサインじゃないだろうか?

「・・・お母さんかもしれない」

 理人くんから花を受け取り、家に入るとすぐに花瓶に挿す。

 私がカーネーションをじっと見つめていると、後ろから理人くんがそっと抱き締めてきた。

「良かったな」

 理人くんは多くは言わない。

 でも、その言葉を聞いて思わず涙が出た。

 理人くんの方を向いて、彼に抱きつくと彼はそっと私を抱き締めた。
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