不器用なシンデレラ
 でも、スペインの中では治安も良くて、住んでる人たちもとてもフレンドリーなので私はすぐにこの街が好きになった。

 理人くんはこの街についてから、ずっと景色をカメラに収めている。

 昼もいいけど、私は夜ライトアップされた城壁を眺めるのが好きだ。

 特に今夜は月もキレイで幻想的。

 まるで1枚の絵を見ているような感じがする。

「ここ、気に入った?」

「うん。静かでいい街だね。何より城壁が凄くキレイで。大貫さんのレストラン、この城壁をイメージしたんでしょう?圭吾くんも凄いね」

「ああ。凄いな。今日撮った写真、圭吾の墓前に供えようと思う」

「うん。圭吾くんもきっと喜ぶよ。ここに連れてきてくれてありがとう」

「礼なら圭吾に。あいつが俺達をここまで連れてきてくれたんだ。俺も花音と来れて嬉しいよ」

 理人くんが私の髪にそっと口づける。
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