不器用なシンデレラ
4、ピアノは正直です
「花音ちゃん?」

 駅を降りてとぼとぼと歩いていると、懐かしい顔に出会った。

「安田先生」

 私が幼稚園の頃一番大好きだった先生だ。

 今では自分が卒園した幼稚園の園長先生。

「久しぶりね。今仕事終わったの?良かったら、うちでピアノ弾いて行かない?子供たちはもういないし、久しぶりに花音ちゃんのピアノ聞きたいな」

「・・・良いんですか?」

 こんなひどい気持ちのまま家には帰りたくなかった。

 私のひどい顔を見て先生は何か察してくれたのかもしれない。

「今も昔も花音ちゃんは、私の可愛い生徒だもの」

 先生が私の顔を見てにっこり笑う。

 昔と変わらないその笑顔を見ているとホッとする。

 園を訪ねるのは1ヵ月ぶりくらいだった。

 もともと幼稚園の先生になりたくて私大に進学したのだ。

 結局、土壇場になって理人くんを追って今の会社に就職した。
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